全3巻をはらはらしながら読んだのが1年半程前。
好評故に続きが出たことを知って、素直に大喜びできた。
1度最終巻、と銘打った後に続きが出る場合「もうやめとけば良いのに・・・」と思うことが多いのだけど、この作品に関しては、何故か全くない。
まず、表紙のジェンが!あぁ、そうだよ、この子だよ!と嬉しくなる。
そして上下巻で本文インク色が違う辺りに、出版社の力の入れ方を感じて喜ぶ。
・・・読む前から自分、大忙し。
そして私は、金原瑞人氏の翻訳(これに関しては共訳だが)が好きだ。
文章から、わくわくする冒険の匂いがする。
読み始めたら止まらないのだ。惹き込まれる。
私はどちらかと言えば、いじめられ主人公は好きでない事が多いのだが、ジェンはどんなに嫌な思いをしても、ざっくり返してくれるので安心?だ。
何かの策略のために、わざと言わせていることも多い。
ウィットに富んだ、という言葉があるけれど、あれは彼の事を指すんじゃないかと思う。
とにかく口が悪くて、態度も悪くて、ついでに短気で生意気なジェンだけど、何故か憎めない。
いつの間にか、手に汗を握って応援してしまう。
どんなに嫌な事件でも、ジェンならどう切り抜ける?とわくわくする気持ちにすり替わってしまっているから不思議なのだ。
そもそも私にとって、ジェンがイレーヌに告白したことが、信じられない大どんでん返しだったので、何だかもうこれ以上は何が起こっても楽しめるような気がしていた。
3巻を経て、私の中でジェンの信用はかなり高いものになっているので(盲目的)今回の語り部がアトリア人のコスティスだということすら、面白い。
あぁ、アトリア人らからはこう思われているのか、でも実際はきっとこうだよ?なんてほくそ笑みながら読めるからだ。
ものすごくジェン贔屓な読み方をしている自覚はあるけれど。
けれど大抵の場合、ジェンは期待に応えてくれるし、良い意味で期待を裏切ってもくれる。
ぼーっとしているようで、きちんと全体を把握しているし、個々の思惑もちゃんと嗅ぎ分けている。
相変わらず隠し通路を通ってみたり、他人の部屋に深夜、踏み込んでみたりする様子を見ると、ジェンはやっぱりエディスの盗人なのだ、と思えて嬉しくなる。
逆にストレスが溜まって、それを他人にぶつけずに1人になりたがる様子は、よっぽどなんだな・・・と苦しくなる。そんなとき、彼は大人だと思い知らされる気がする。
ジェンは、しょっちゅうイレーヌの元に通っているんじゃないかな、と思う。
彼が廊下を通らずに彼女の元に行く事なんて、朝飯前だろうし。堂々と人前を通って会いに行くなんて、例え夫婦になっていても、ジェンは耐えられないと思うのだ。
ジェンの世界は、イレーヌを中心に廻っている。
それは多分、前作から変わっていないことだ。
イレーヌ自身は、国を中心に考えなければいけないから、その国の中心にジェンがいれば、国=ジェンという価値観で生きられるから、王位を譲っているのではないか・・・っていうのは、夢を見過ぎかな。
前篇の最後で、この2人は大喧嘩をしているようだけど、彼らのケンカなんて、いつもの事ではないんだろうか。そう思えるから、実はあまり深く心配していない自分がいる。
それより、ジェンの周りが少しずつ固まってきているように見えるのが、気のせいでなければ良いのだけれど。
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