ホラーミステリー。
自殺した友達が、蜘蛛に生まれ変わって会いに来る話、と聞いて、カフ力?と思ったのですが(読んだ事はないけれど)実際に読むと印象が変わりました。
・・・乙一でした。
どこか現実離れしているところとか、主人公が少年だという点とかはもちろんですが、何と言うか雰囲気が乙一作品。
中途半端に読むのをやめたら、いつまでも頭にこびり付きそうで、一気に読みました。
一度壊れてしまった物を、元通りに直そうとして、掛け違えてしまったボタンに気付かない振りをしているような。
ちなみにこの本を読んだ母の感想は「何ともマンガ的だよね」でした。何だそれ。
ミカが人間の姿をしていないのではないか、という疑惑は随分最初からあったのですが、さすがにその姿までは想像できませんでした。
ミチオと母親が「ミカ」と呼ぶ対象の違いにも、気付けませんでしたし。
とにかく正体不明の違和感が付きまとって、何とも嫌な感じだったのです。
それにしても、ミチオがミカやSと過ごしていた日々は、本当に彼らと会話していたのか、ミチオ自身が全て作り出した『物語』なのか、結局はっきりしませんでしたが。
あれが『物語』だとすると、それは凄いな、と思います。
自分に都合の悪い事も言うし、喧嘩もしたし、こそこそとミチオの知らないところで内緒話をしたりもしていました。
自分の中で天使と悪魔が葛藤するような、使い古された例えを具現化しただけ、と言えばそうなのですが。
ずっとその中で、それこそ3年も生きてきている訳ですから、考えられなくもありませんが、それでも。
頭の回転が速い彼故の、現実と半歩ズラした世界は、やはりどこか哀しく感じました。
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